虫に喰害された古文書等を修理する場合、古くから和紙を用いた繕い修理(補修紙の充填)が行われてきました。この方法は、全て手作業で行うため多くの時間と労力が必要でした。
文化財保護法が昭和25年8月29日に施行される以前、国内における文化財の修理は古来の経師や表具師の仕事でした。もちろん現在のように本紙を修理する際、様々な調査(繊維同定、種類、叩解、劣化程度など)はされずに修理が施されていました。当然のことながら、時代に応じた修復方法が取られてきたわけであります。
明治時代以前の修理では、下記のような修繕方法も見られます。
絵絹である経糸、緯糸を絵絹があるかのように墨で描かれていた修理
◆漉填め法を利用した本紙繊維補強
漉填め法(リーフキャスティング)※は、弊社では昭和50年代後半に特許第1645573号「紙料液による古書画等の修復方法並びにその装置(写真5)」(以下、本装置)として弊社が特許を取得しました。この方法は、紙を製作する際に、使用する充填材を修理本紙全面に流し込むため、従来の繕い修理よりも短時間で補填を行うことが可能です。
漉き填め法を利用した本紙の補強作業は、本紙の紙質調査を行った後、過度に弱体化した本紙を剥落止め後、本装置を用いて毛羽立ちを抑えるよう本紙を特製の薄葉紙にて挟み込み、次にサクション台にて、膠、麩糊、セルロース等の混合液を浸透させる方法です。(写真6)
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※現在は公開特許となっており、日本だけに留まらず、世界の文化財保存修理分野でも幅広く使用されています。